起:捕われ
「じゃあ、また明日〜」
夏も終わりに近いある日の夕方、学校からの帰り道。
友達と別れた私は家への道を歩き始める。
私の名前は久保真紀、友達からは「クボマキ」と呼ばれている。
栃木県小山市の公立高校に通っている高校1年生だ。
学校の成績はあまり良くないがそれなりに楽しく毎日を過ごしている。
2学期が始まって2週間、学校のある生活にもようやく慣れてきた。
実は今日は両親とも用事で出掛けて帰ってこない。
夜更かししても怒られないのはとても幸せなことだ。
(少し寄り道していこうかな♪)
通いなれた道を鼻歌交じりで歩いていく。
と、道端の草むらで何かキラキラ・チカチカと瞬いている。
注意して様子をうかがうと何やら騒がしい気配も感じる。
(・・?・・何?)
警戒しながら覗き込む私。
と、その時、
突然ぐらり、と体が傾き上下左右がわからなくなる。
谷底に吸い込まれるような感覚と共に意識が遠のいていった。
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「ひぃぃぃぃぃ!!、ぅあぁぁぁぁ!!!」
気が付くと同時に私は悲鳴をあげて飛び上がった。
意味のある言葉が出てこない。
地面に横たわっていた私の周りを囲んでいたのは人間じゃない。
大きくてプヨプヨしたのとか、細くてとんがってるのとか、
大きさも形も色々なのがうごいて、お互いささやきあっている。
(何?・・・何なのぉ・・・)
取り乱す私に気付いたように、かろうじて人に近い(女性に近い)姿が後ろから現れる。
「驚かしてごめんなさい。危害は加えませんから安心してください」
「あ・・あ・あなたたち、ナニモノなの!?」
「・・・何といえばいいのか・・・」
説明しづらそうにくちごもる。
「分かりやすく言えば・・・あなた方のいう妖精のようなものです」
「妖精・・・妖精って・・・何よぅ・・」
少し落ち着いてきて周りに目がいく。
周りを囲む緑色の高い壁、いやこれは植物だ。
地面には大きな岩が何個も転がっている・・いや、これは単なる石ころなのか。
これは、もしかして・・・私が小さくなっている!?
「まず落ち着いてください。
あなたを巻き込んだことは申し訳なく思っていますが・・・
話を聞いてもらえませんか」
徐々に頭が混乱から醒めてくる。
何が何やら分からないが、とにかくこのままでは何ともならない。
私はおとなしく話を聞いておくことにする。
彼女(?)の説明をまとめるとこうだ。
私がこんなになってしまったのは事故らしい。
妖精の世界は調和で成り立っているそうだ。
しかし1週間ほど前からその調和を乱すものが現れた。
『ノイズ』と呼ばれるそれらは何処からか発生し、妖精にとって害のある『電波』を出す。
電波を浴びた妖精は混乱して仲間にも悪影響を与えるという。
そこで、その対策のため・・・と彼女は言う。
『ノイズ』を除去し仲間を正気に戻す装置を作っていた。
特殊な波(『エコー』というそうだ)を浴びせれば、
『ノイズ』は破裂して消え、影響を受けた仲間も元に戻るという。
その装置がようやく完成したのだが、その際手違いで強い異質な『エコー』が発生してしまった。
のぞきこんでいた私は直接それを浴びてしまったらしい。
「唐突な話でしょうが信じてもらうしかありません。
誠に申し訳ないことです」
神妙に頭を下げる。
「装置も1個ですが無事に完成しました」
両手にささげて見せてくれる。
と、その時、周りが急に騒がしくなる。
「いけない!!『ノイズ』の大群が流れてきたようです・・」
ハッとした表情でつぶやく。
「我々は急いでここから脱出しなければいけません」
緊張感が急激に高まる。
「あなたはこの子に乗っていってください」
「え・・・」
いつのまにか、側に黄色い塊が浮かんでいた。
トドと同じ位の大きさでプヨプヨしている。
前の方(?)に目らしきものが付いている
「臆病ではありますが『電波』への耐性は一番あります」
「あ・・はい・・」
事態は唐突に急速に進行していく。
「あと、この装置も持っていてください」
渡された『エコー』発生装置とやらを見る。
ゴムひものようなものの途中と端っこに丸っこい玉が付いている。
玉の無い端にはスイッチらしきものがある。
「危ないときは遠慮なく使ってください。安全に脱出できます」
「はあ・・・」
時間の猶予はあまりないようだった。
とにかく今は言われた通りにしておこう。
「さあ行きましょう。
早く脱出しなければいけません!!」
〜ステージ1(夕暮れの脱出)へ〜
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